人生そうはいかないよね・・・佐野洋子「そうはいかない」

1話あたり5~6ページの、ショートストーリー集です。
実話なのか小説なのか、なんかビミョウな世界です

なんというか、実母への昔の恨みつらみ、ぼけた老婆の汚らしさ、姑の憎たらしさ、女友達の嫌らしさ、ダメな男と諍う女の馬鹿らしさ・・・などなど、女の人生の醜いところが赤裸々に書かれています。
そういうのが苦手な人はひいちゃう本かも?
でも不思議と、不快感はありません。
そうだよ、人生ってそういうもんだよ。そういうことって、みんな口に出さないしひた隠しにするんだけど、やっぱりどこでもあるんだよ。人間ってこんなどうしようもないモンだけど、それがまたカワイイんだよ。
・・・って感じです。
・・・そう思うのはヒモ夫とイヤ姑がいる私だけか?

でもまあ、人間の毒や人生の醜いところを描きつつ、それを肯定しているというか、
骨太な明るさとユーモアを感じます。
少なくとも、救いがたさや暗さはないです。
作者は、あまりにも有名な、あの「100万回生きたねこ」を書いた人です。
絵本作家や児童文学家が、シミひとつない清らかな人だったらキモチワルイというか、
まあ酸いも甘いも噛み分けてないと童話なんて書けないのでしょうが、
この人もいろんなことがあった人生を乗り越えて、ああいう話を書いたのかなあ・・・と
作者の人生を考えてしまいます。
最近知ったのですが、この方、谷川俊太郎さんと結婚してたこともあるそうですね。
そう考えると、これは若い人には難しい味かも。
ワタシも、夫に苦労させられる前だったら、こんなに一生懸命読まなかっただろうな

こうして「苦労した女」は、「何事にも動じないオバハン」になるんだそうです。
尊敬する上司が言ってました。
幸せなだけな毎日じゃ、清濁併せ呑む度量も、人生の幅も身に付かぬ、と。
まあ、経験はすべて人生の肥やしということでしょうか。
年配の女性に読んでほしい本です。
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